養老渓谷の深い谷と切り立った絶壁は、300万年の時が積み上げた地層を、数十万年の歳月をかけて大地が持ち上げ、水の流れが地層を削り出し、地球の記憶を剥き出しにすることによって形作られた。※
人は通常、自分が生きてきた時間を遥かに超えた長い時間の存在、そしてその時間が「今」と地続きであることを認識できない。しかし、剥き出しになった地層の断崖と対峙したとき、その圧倒的な姿形や質感の中に、積み重なった膨大な時間が内在していることに気づく。
私たちはこの悠久の時間が刻んだ巨大な存在を「Deep-time Sculpted Existence」と名付けた。
この巨大な存在の中で、花々は誕生と死滅を繰り返し、連続する生命の時間が流れ、それが今を生きる人々の存在によって変容していく。
渓谷の深淵に入り込み、さまよい、この圧倒的な存在と一体化するとき、積み重なった膨大な時間は、今という瞬間と連続していることがあらわになる。
そして、二つの時間が重なり合う中を歩いていくとき、人は、長い長い時間の境界のない連続性の上に自分の存在があることを、身体ごと実感するのだ。
※養老渓谷には、地球の磁場(N極とS極)が反転した痕跡を世界で最も鮮明に留める「地磁気逆転地層」が存在する。この地層の歴史的価値により、約77万4千年前から12万9千年前の地質年代は、日本由来の地名として初めて「チバニアン(千葉時代)」と命名されている。